猫を見ると話しかけたくなる

猫好きの人なら猫を見れば話しかけたくなるのは、夏が暑く冬が寒いのと同じ位当たり前の事だと思うが、私は何も話しかけていないのに、街中ですれ違った猫から話しかけられた事が、確かに1度だけあるのだ。

勿論ファンタジー物語の様に人間の言葉で話しかけてきた訳ではなく、私の方を見て「ニャア」と鳴いただけなのだが、私にはどうしても、何か言いたい事がある様に思われて仕方なかったのだ。それは猫好きの欲目だったのかもしれないが、かと言って軽々しく、それこそ猫撫で声で「なあに」と話しかけられる雰囲気でもなかった。

その猫が見るからに大人の貫禄のある猫だったからということもあるが、「人生とはなんだ?」みたいな、何かしら哲学的な問いかけの様に思われると言ったら笑われてしまいそうだが、私はその時は確かにそう感じたのだ。しかしそれは家に帰ってから思った事なので、猫がアッという間に去ってしまった後で、その場では何かモヤモヤとした疑問だけが残ったというのが正直なところである。

猫好きとして初対面の猫に話かけた事は数知れずで日常茶飯事だが、そんな私が身近にいながら神秘性を兼ね備えている猫から、たった1度でも話しかけられた事があるというのは、密かな自慢の1つなのだ。だからと言って猫の言葉がわかるという、ミャウリンガルなるものを携帯して歩こう等という気はさらさらない。